今週、IBMはWatson Assistantの改良点を発表しました。その中には、カスタマーサービスに問い合わせた際、顧客意図を見極めるという機能の強化があります。このシステムは、顧客の意図を読み取り、何を求めているのかを正確に把握するため、追加で質問を応答する仕組みとなっています。
「同僚」としてのWatson Assistant
今回リリースされるアップグレードは、顧客が現場で AI を使って仕事をし、その経験から生まれたものです。ある大手グローバル銀行は、カスタマーサービスの評判の悪さの対策として、Watson Assistantを導入しました。その結果、顧客満足度が50%向上し、電話対応の時間が10%短縮されたという劇的な成果が得られました。
銀行のカスタマーサービス担当者は、AIの登場により仕事を失うことになるのではないかと心配していましたが、AIが比較的簡易な問い合わせを迅速に処理している間に、より複雑な問い合わせに時間を割くことができるようになりました。それにより従業員はWatson Assistantを「大切な同僚」と考えており、システムの指導にも積極的です。もはやAIは人間への脅威とは見なされず、銀行の作業に欠かせない存在となっています。
具体的な特徴
・Watson Assistant に既存のチャットや通話のログをアップロードすると、実際のユーザーの質問や発言に基づいて学習することが可能です。
・複雑な質問には、新しい検索スキルでの回答が可能となります。企業のウェブサイトやドキュメントを検索して、ユーザーの質問にベストな回答を提供します。
・ユーザーが曖昧な質問をしたり、複数の回答がある可能性のある問い合わせをした場合は、回答リストを提示の上、ユーザーに正しいものを選ぶように促します。例えば、ユーザーが「新しいカードが必要です」と言うと、Watson Assistant は「1. 壊れたカードを交換する 2.盗まれたカードの報告」というように応答します。
導入事例
Humana USAでは、診療所や病院の問い合わせに対応するバーチャルエージェントの開発を主導しました。目標は、単に質問に答えるだけではなく、これらのやりとりの結果、評価基準、認識を把握し、よりスマートなシステムを構築することでした。これによりWatson AI バーチャルエージェントは、120の診療所の問い合わせに対応し、「ワクチンが保険適用されるかどうかを知りたい」などの質問にも答えています。
【考察】企業と顧客の信頼を得るAIの存在
AIによるカスタマーサービスは私たちにとって身近な存在となりつつあります。顧客にとっては、「電話が繋がりにくい」「問い合わせ窓口の営業時間に間に合わない」「返信が遅い」などの多くのストレスから解放されるでしょう。また、企業にとってはAIが単純な問い合わせの対応を引き受けることにより、人間がより複雑な内容の質問に時間を割くことができるため、「業務の専門性の向上」という面でも大きな期待ができそうです。