教育用ゲームで生徒がどの程度学習しているかを、より予測できるようになった人工知能(AI)モデルが研究者たちによって設計されました。改良されたモデルは、マルチタスク学習と呼ばれるAIトレーニングの概念を利用しており、指導と学習成果の両方を向上させるために利用できる可能性があるといいます。
マルチタスクモデルによる学習予測
ノースカロライナ州立大学教育情報学センター(CEI)の研究員Jonathan Rowe氏は、クリスタルアイランドという教育ゲームをプレイしている際、生徒がテストの各問題に正解するかどうかを予測できるモデルを開発していました。
標準的なアプローチとして、テストを1つのタスクとして見て、テスト全体のスコアに注目することで、マルチタスク学習フレームワークを採用しました。
181人の学生のゲームプレイとテストのデータによって、AIは各学生のゲームプレイと各学生がテストの質問1にどのように答えたかを確認し、質問1を正解した学生の共通の行動と、質問1を間違えた学生の共通の行動を特定することで、AIは新しい学生が質問1にどのように答えるかを判断することができました。
そして、このマルチタスクモデルは、従来のAIのトレーニング方法に依存した他のモデルよりも約10%正確であることが発見されました。
このマルチタスクモデルを使用することで、学生のゲームプレイを見て、学生に追加の指導が必要である場合は、教師に通知することができるといいます。また、例えば、生徒が苦手としている分野を克服するためにゲームの内容を変更することも可能です。
心理学とAIのアプローチの融合
心理学の分野では、それぞれの質問にはそれぞれの価値観が存在すると言われてきました。今回の研究は、この心理学の側面と、ディープラーニングや機械学習によるAIへのアプローチを融合させたアプローチをとっているとのことです。
これにより、複雑なモデリング技術を、学生のニーズに適応する教育用ソフトウェアに組み込まれる可能性が生まれるといいます。
【考察】AIによる教育ゲームの進化
これまでの教育ゲームは、プレイする生徒のテスト結果などを見て、間違えた問題を再度出題するというようなものがほとんどでしたが、この生徒の思考を予測するというAIのマルチタスクモデルは、より的確な指導を可能にすることが期待できます。
自宅学習の重要性が問われる昨今、集団指導や映像学習のような一方的な指導では、サポートするのが難しい生徒個々人への指導を、AIが支援することになるかもしれません。
参考:https://www.sciencedaily.com/releases/2020/02/200205132409.htm