探査機マーズ・ローバー・キュリオシティは8年前から火星に滞在しています。数分かけてデータにラベルを付けて、地形をスキャンするAIに供給することで、キュリオシティを支援しているといいます。
機械学習で火星探査機からの画像を精査する
キュリオシティは単独では航行しているわけではありません。火星から戻ってくる画像を分析する地球上の人々のチームが存在します。しかし、そのためには、岩石や土、砂などがどこにあるのかを正確に把握するために、画像を精査する必要があります。
これはまさに機械学習システムが得意とする作業です。顕著な特徴が明確にラベル付けされた画像をたくさん与えれば、機械学習システムはラベル付けされていない画像の中から類似した特徴を見つけることを学習します。
AIの訓練における課題
問題は、顔、猫、車などの画像のデータセットはたくさんあるものの、火星においてはそうはいかないという点です。
「一般的に、ディープラーニングアルゴリズムを訓練するためには、何十万ものデータが必要です。例えば、自動運転車のアルゴリズムは、道路、標識、信号機、歩行者、その他の車両の多数の画像を用いて訓練されます。ディープラーニングのために公開されている他のデータセットには、人や動物、建物などが含まれていますが、火星の風景はそこには含まれていません」と、NASA/JPLのAI研究者であるヒロ・オノ氏はニュースリリースで述べています。
彼らはすでに土壌のプロパティとオブジェクトの分類、またはSPOCと呼ばれる火星の地形分類アルゴリズムを持っていますが、それを改善するための支援を求めているといいます。機関はZooniverseに何千もの火星からのイメージをアップロードし、誰でもそれらに注釈を付けることができるそうです。
これまでのところ、このプロジェクトでは約9,000枚の画像のうち、約半分の画像にラベルを付けています。このサイトは現在英語で利用可能で、スペイン語、ヒンディー語、日本語、その他の翻訳も予定されているとのことです。
AIの改良により、ローバーはどこで運転できるかだけでなく、トラクションを失う可能性や、個々のホイールの配置に影響を与えるその他の要因を知ることができるようになるかもしれません。また、キュリオシティの動きを計画するチームにとっても、自信をもってSPOCの分類ができれば、画像を確認する時間を削減することができるといいます。
【考察】火星の研究におけるAIの役割と、人々の支援
AIにより自動的に地形を読み取ることができれば、研究者たちにとって大いに時間の節約となり、研究に注力することができます。
ただし、ディープラーニングアルゴリズムを訓練するのに必要とされる、ラベル付けされた画像のアーカイブの不足が課題となっています。そこで火星の地形の種類をラベル付けするオンラインツールを使って支援が呼びかけられています。
人々の支援があれば、AIの活用度が更に高まり、今後の火星探査において大きな功績を生み出すかもしれません。
参照元:You can help a Mars Rover’s AI learn to tell rocks from dirt