知的家庭教師システムは、代数や文法などの特定の科目を教えるのに有効であると言われていますが、これらのコンピュータシステムを作成するのは手間がかかります。カーネギーメロン大学の研究者たちによれば、コンピュータに学習させることで、迅速にシステムを構築できるといいます。
人工知能を用いてコンピュータを学習する新たな開発方法
人工知能を用いた新しい方法を用いた場合、教師が複数列の足し算などの問題を解くためのいくつかの方法を示し、コンピュータが間違った反応をした場合にはコンピュータを修正することで、コンピュータを学習させることができるといいます。
CMUのヒューマン・コンピュータ・インタラクション研究所(HCII)の博士課程の学生であるDaniel Weitekamp III氏によれば、ここで特筆すべきは、コンピュータシステムは、教えられた方法で問題を解くだけでなく、トピック内の他のすべての問題を解くために一般化することで、教師とは異なる方法で解くことを学習することだと述べました。
「知的家庭教師システムは、問題を解決するためのあらゆる種類の方法を学ぶ必要があります。問題解決の方法だけではなく、問題解決を教える方法を学ばなければならないのです」
これはAIベースの知的家庭教師システムを作る開発者にとって継続的な課題であると、人間とコンピュータの相互作用と心理学の教授であるKen Koedinger氏は述べました。知的家庭教師システムは、生徒の進歩を継続的に追跡し、次のステップのヒントを提供し、生徒が新しいスキルを習得するのに役立つ練習問題を選ぶように設計されています。
Koedinger教授らが最初の知的家庭教師システムの構築を始めたとき、彼らは手で生産ルールをプログラムしたといいます。その後、彼らは問題を解決するために考えられるすべての方法を実演するというショートカットを開発しました。これにより開発時間は40時間から50時間に短縮されましたが、多くの科目では、すべての可能性のある問題に対してすべての可能性のある解法を示すことは実際には不可能であり、ショートカットの適用性が低下すると同氏は指摘しています。
この新しい手法では、学生がどのように学習するかをシミュレートする機械学習プログラムを利用しています。Weitekamp氏は、この機械学習エンジンのために、プログラミングよりもはるかに簡単な「ショーアンドコレクト」プロセスを採用したユーザーフレンドリーなティーチングインターフェースを開発しました。
CHI論文では、この基礎となる機械学習エンジンは、方程式の解法、分数の足し算、化学、英文法、理科の実験環境など、さまざまな科目で機能することが示されています。
AIプログラマーではない普通の教師も構築可能
この手法は、知的家庭教師システムの開発を加速させるだけでなく、AIプログラマーではない普通の教師が独自のコンピュータ化された授業を構築することも可能にします。例えば、教師の中には、足し算をどのように教えるか、化学ではどのような表記法を使うかなど、自分独自のやりかたを持っている人がいます。新しいインターフェースは、教師がAIチューターのために好みの宿題を作成できるのです。
また、機械学習システムは、学生と同じ場所でつまずくことがよくあるため、教師が新たな気づきを得る可能性があるといいます。
【考察】AIによるコンピュータへの学習と、教師の活用方法
システム構築が困難な知的家庭教師システムを、AIを用いて学習させる手法は、教える存在を更にAIが教えるという革新的な発想から来ています。
更に、教師が独自の授業手法を反映させたシステムを構築することができれば、今後教育現場における知的家庭教師システムの活用はより浸透していくかもしれません。
参照元:New AI enables teachers to rapidly develop intelligent tutoring systems