研究者たちは、ディープラーニングを使用して、熱波のような極端な気象イベントを、最大5日前まで正確に予測する方法を学習したコンピュータシステムを作成したといいます。
自己学習型「カプセル・ニューラル・ネットワーク」
ライス大学のエンジニアは、現在の気象状況に関する最小限の情報を使って、熱波のような極端な気象現象を最大5日前まで正確に予測することを自己学習するディープラーニング・コンピューターシステムを作成しました。
皮肉なことに、ライス大学の自己学習型「カプセル・ニューラル・ネットワーク」は、1950年代にコンピュータが時代遅れにした天気予報のアナログ手法を使用しているといいます。トレーニングの間、それは何百ものマップのペアを調べます。各マップは、5キロの高さでの表面温度と気圧を示しており、各ペアは数日間隔でそれらの条件を示しています。一度訓練されると、システムは、それが以前に見ていなかった地図を調べ、85%の精度で異常気象の5日間の予測を行うことができたといいます。
このシステムが更に発展すれば、気象予報士のための早期警報システムや、異常気象につながる大気の状態をより深く知ることに役立つツールとして機能する可能性があると、ライス大学のPedram Hassanzadeh氏は述べています。
ディープラーニングを使用することの利点
1950年代にコンピュータベースの数値気象予測(NWP)が登場して以来、日々の天気予報の精度は着実に向上してきました。しかし、大気の数値モデルが改善され、より強力なコンピュータが登場しても、2003年のフランスや2010年のロシアでの致命的な熱波のような極端なイベントをNWPで確実に予測することはできません。
2017年後半、Hassanzadeh氏と研究の共著者で大学院生のAshesh Chattopadhyay氏とEbrahim Nabizadeh氏は、これまでとは異なるアプローチを取ることにしました。
「これらの熱波や寒波が発生したとき、天気図を見ると、ジェット気流に奇妙な挙動が見られることが多く、大きな波のような異常なものや、全く動いていない大きな高気圧のようなものが見られることがあります。」とHassanzadeh氏は述べています。「これはパターン認識の問題のように思えました。そこで私たちは、異常気象予報を数値的な問題ではなく、パターン認識の問題として再構築してみることにしました」
ディープラーニングは人工知能の一形態であり、コンピュータが明示的にプログラムされていなくても、人間のような判断ができるように「訓練」されています。ディープラーニングの主力である畳み込みニューラルネットワークは、パターン認識に優れており、自動運転車、顔認識、音声転写、その他多くの進歩の鍵となる技術です。
「コンピュータ登場前に行われていた予測の一つの方法は、今日の気圧配置を見て、以前のパターンのカタログを見て、比較して、アナログで似たようなパターンを見つけようとすることです」とHassanzadehは言いました。
彼は、ディープラーニングを使用する利点の一つは、ニューラルネットワークに何を探すべきかを指示する必要がないことだと言いました。
「ニューラルネットワークがそれらの関連性を見つけることを学習したことにより、異常気象に重要なパターンを学習し、それを使って最良のアナログを見つけたのです」
ライスのシステムが運用予測に組み込まれるまでにはまだ多くの作業が必要であるものの、熱波やその他の異常気象の予測が改善されることを期待しています。
これがNWPの代わりになると言っているわけではなく、NWPの有用なガイドになる可能性があります。異常気象が発生しそうな場所にNWPのリソースを集中させることができるのです。
【考察】AIとアナログな手法との融合と気象予報の向上
今回のケースにおいて興味深かったのは、AIを活用した新たなアプローチ「カプセル・ニューラル・ネットワーク」が、1950年代以降、時代遅れとされていたアナログな天気予報手法を使用していることです。
AIの登場により、コンピュータの使い方は大きく変化します。時に、昔の手法から得た発想が、AIの技術と融合し、今まで予測できなかったような気象予報が可能になるかもしれません。
参照元:Deep learning accurately forecasts heat waves, cold spells