Nature誌は、新たな抗生物質が、以前は治療不可能とされていた細菌株に対するものを含む 1 億以上の分子を調査する AI 機械学習アプローチによって、開発されていると伝えました。
新たな抗生物質を発見するAI
AIを使って初めて発見された抗生物質は、ハリシン(『2001年宇宙の旅』の「HAL9000」にちなんで命名)と呼ばれています。それまでAIは抗生物質の発見プロセスの一部に応用されていたものの、全く新しい種類の抗生物質をゼロから発見するのに役立ったのは初めてだといいます。
MITのAI研究者であり、研究の共著者であるレジーナ・バルジレイは、AIは人間の専門家には未知の新しいパターンを学習することができると述べています。MITチームは、外部のグループや企業と提携して、ハリシンを臨床試験に持ち込み、また、より多くの新しい抗生物質を見つけたいと考えています。
研究実績
スウェーデンのリンショーピン大学の研究チームでは、AIを使って病気の原因となる遺伝子をピンポイントで特定しています。この技術は、個別化医療の進展に貢献し、さまざまな病態に応じた確実な個別治療につながると期待されています。
また、カナダのディープゲノミクス社のチームは、20万以上の遺伝子変異に関連する大量のデータを訓練アルゴリズムに投入し、人間の特定の病気の原因となっていると思われる人間のDNAの欠陥タンパク質間の関連性を見つけることを期待しました。ディープゲノミクスのCEOであるブレンダン・フライ氏は「AIは分子生物学を学習した」と述べています。
ミシガン大学医学部のフレッド・アスカリ博士は、「これは大きな飛躍です」と述べています。一般的な開発スケジュールが3年から6年であるのに対し、AIによる開発が必要としたのは全体で18ヶ月。ディープゲノミクスは、これを繰り返すことで、新薬発見までの時間を短縮するという画期的な可能性があると考えています。
【考察】日進月歩の医学を担うこれからのAI
新たなウイルスの誕生と、人間による抗生物質の発見という攻防は、医学史以来続けられてきた、長い戦いです。もし、通常数年かかる新薬の発見プロセスを、AIが大幅に短縮することができれば、人々の健康と経済活動を守る、大いなる力になると期待できます。