ニューヨークのコロンビア大学でジャーナリズムの教授を務めるフランチェスコ・マルコーニ氏の新刊『Newsmakers, Artificial Intelligence and the Future of Journalism』では、ジャーナリズムの未来はAIにあるかもしれないと述べられています。
AIによるジャーナリズムの新たなビジネスモデル
今日のニュースルームでのAIの活用例として、カナダの通信社「Canadian Press」の、AIに基づいて翻訳を高速化するシステムなどが挙げられます。また、Agence France-Presseの通信社は、AIを使ってドクターズフォトを検出しています。
ケベック大学のジャーナリズム教授であるパトリック・ホワイト氏はによれば、AIが記者の現在の仕事の8~12%を引き継ぐことになると予想されているとのことです。編集者やジャーナリストは、これまでの機械では生成できなかった長編ジャーナリズム、特集インタビュー、分析、データ駆動型ジャーナリズム、調査型ジャーナリズムに方向転換することになるかもしれません。
例えば、AP通信社では、スポーツのスコアや四半期ごとのビジネスの収益報告書のために2~6段落を書くなどの基本的な作業をAIロボットが行っているといいます。ワシントン・ポストでは、AIロボットが選挙結果やオリンピックの結果を支援しています。ブルームバーグ・ニュースでは、AIロボットが大規模なデータベースをスキャンし、トレンドや異常が出てきたときにアラートを見るようにしています。記者はその中からフォローアップすべきものを判断し、事実確認や情報の文脈への落とし込み、インタビューの実施などの作業を行います。
これからのメディアは、AIにより新しいビジネスモデルを開発し、AIが提供するものを活用することが重要です。
人間のニュース請負業者がAIに置き換わる
一方、マイクロソフトは最近MSNで働いているニュース制作の請負業者約50人を削減し、AIを使って彼らの後任にしようと計画しているというニュースが、シアトル・タイムズ紙で報じられました。
マイクロソフトでは、AIがアルゴリズムを使って数十社の出版パートナーからトレンドのニュースストーリーを識別し、見出しを書き換えたり、コンテンツに付随するより良い写真やスライドショーを追加したりするのに役立っているとのことです。
中国のバーチャルAIニュースキャスター
中国の国営通信社である新華社は最近、最新の人工知能3Dニュースキャスターを発表しました。
Xin Xiaoweiと名付けられた新しいAIニュースキャスターは、同局の人間ニュースプレゼンターの1人であるZhao Wanweiをモデルにしています。
この技術を共同開発した検索エンジン会社のSogouによると、新しいAIキャスターは マルチモーダル認識と合成、顔認識とアニメーション、転送学習を利用しているといいます。
新華社とSogouは数年前からバーチャルプレゼンターに取り組んでおり、2018年にはデジタルアンカーの邱和(Qiu Ho)が登場し、2019年にはロシア語版が追加されました。また、2018年に開催された世界インターネット会議で、両社は二つのAIニュースキャスターを実演しました。見た目は同じですが、1つは英語を話し、もう1つは北京語を話します。
最初のモデルを開発するために、何時間ものビデオ映像を研究し、実際のアンカーの動きや表情などを再現したといいます。「AIアンカーは正式に新華社の報道チームのメンバーになった」と新華社は述べています。他にも、バーチャルアンカーは、WeChatやWeibo、新華社の英語・中国語アプリなどのチャンネルで使用されています。
【考察】ジャーナリズムにおけるAIの活用と、人間の役割
ジャーナリズムにおいて、すでにAIは様々な形で活用されています。
翻訳作業など様々な情報処理にAIを活用する方法は、AIが人間の仕事をサポートするような形ですが、ニュース制作やニュースキャスターをそのままAIに置き換えるという流れは、人間の仕事そのものの代替としての形です。
AIの様々な活用方法が模索される中、AIと人間がどの分野で力を発揮してよりよりビジネスモデルを築いていくかは、ジャーナリズムに留まらず、様々な業界で考えなければいけない課題であると言えます。
参照元:AI Can Save Journalism, or AI Will Replace Journalists – Which is It?