人工知能を導入することで、放射線科医が肺疾患をより正確に分類できるようになるかもしれません。
人工知能と画像処理が肺疾患を分類する
肺気腫を診断し、その重症度を分類することは、長い間、科学というよりも、芸術の域でした。
医学博士であるU.ジョセフ氏は、最近まで、損傷を受けた肺のスキャンは無意味であったと言います。「肺組織を失ったら、患者を助けるためにできる治療はほとんどありませんでした」
しかし、近年の治療の進歩に伴い、この病気を客観的に分類することへの関心が高まっている言います。そこでは、人工知能と画像処理が活躍する可能性があるというのです。
Siemens Healthineers社のAI-Rad Companionを用いた研究では、胸部スキャンを検査するアルゴリズムが、人がどれだけ力強く息を吐くことができるかを測定する肺機能検査と同等の結果をもたらすことが示されました。人工知能は、肺疾患の重症度を定量化し、治療の進捗状況を追跡するために胸部スキャンを使用する可能性に向けた最初のステップとなります。
胸部スキャンは現在のところ、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎、その他の肺疾患を含む包括的な用語)を診断するためのガイドラインには含まれていないといいます。
しかし、客観性や定量化の面でメリットがあることを示すことができれば、画像検査の役割に期待することができます。
シーメンス・ヘルシニアースのカスタマー・エンゲージメント・マネージャーであるPhilipp Hoelzer氏は、客観的な測定ができれば、新しい治療法や薬剤の価値を評価するのに役立つだろうと述べています。Siemens Healthineers社のチームは、このプログラムが、人工知能が放射線科医の臨床専門知識と連携して機能するために有効であるといいます。
患者とのコミュニケーションや、見落としがちな症状の発見への期待
このプログラムはまた、患者への説明において、医師を支援することも期待できます。患者の肺の3Dモデルを作成し、既存の損傷を表示することができるのです。
可視化して情報を伝えることできれば、患者とより良いコミュニケーションをとることができ、禁煙やライフスタイルを買えることを患者に促すことができます。
さらに、AI-Rad Companionは、大動脈や骨密度の測定など、複数の臓器システムにまたがる問題を自動的に検出することができるという利点もあります。Schoepf氏によれば、人工知能は人間が見落とした症状を発見する可能性があるといいます。
「医師は、患者にこのような症状があると言われた上で、基本的にはその症状を説明できるものを探そうとします。つまり、それとは必ずしも関係のない症状については見逃してしまうことが多いのです」
Schoepf氏によると、MUSC Health社は、このシステムをより広範囲に導入するかどうかを決定する前に、3ヶ月間テストを行う予定だといいます。
【考察】医療水準を標準化するAIツール
AIの導入によって、客観的に疾患の程度を定量化することができれば、医療現場において、大きな助けになるでしょう。
このような技術が普及すれば、地域や病院の規模に左右されずに、すべての人に標準化された医療が提供されるようになるかもしれません。
参照元:Artificial intelligence could serve as backup to radiologists’ eyes