次世代の電気自動車や家電製品の動力源となることを目指して、電池の寿命を延ばしたり、電池の健康状態を監視することを目的とした研究で、AI技術が応用されているといいます。
電池の健康状態と耐用年数の予測を可能
ScienceDailyによると、ケンブリッジ大学とニューカッスル大学の研究者らは、現在の業界標準の10倍の精度でバッテリーの状態を予測できる機械学習手法を考案したといいます。これにより安全で信頼性の高いバッテリーの開発が可能になるとのことです。
この新しい方法では、研究者たちは、電池に電気パルスを送り、その反応を監視します。測定値は機械学習アルゴリズムによって処理され、電池の健康状態と耐用年数の予測を可能にしました。この方法はどのようなバッテリーシステムにも追加することができるといいます。
リチウムイオン電池の残存有効充電量を予測できないことは、電気自動車や、携帯電話にとっての課題となっていました。新しい方法では、バッテリー内部の状態をより詳細に把握し、微妙な変化をより的確に検出することができます。
研究を主導したケンブリッジのキャベンディッシュ研究所のアルファ・リー博士は、「小さなスペースに多くのエネルギーを詰め込むことができるバッテリーを開発する際には、安全性と信頼性が最も重要な設計基準となります。放電を監視するソフトウェアを改良し、データ駆動型のソフトウェアを使用して充電プロセスを制御することで、電池の性能を大幅に向上させることができると信じています。」と述べました。
研究者たちは2万回以上の実験を行い、バッテリーの老化の兆候を見分ける方法についてモデルを訓練しました。モデルは、無関係なノイズから重要な信号を区別する方法を学習し、それにより研究者は、電池が劣化する理由をより深く調べるための特定の実験を設計することができるようになるといいます。
エネルギー省の研究者がAIコンピュータビジョン技術を利用
エネルギー省のSLAC国立加速器研究所の研究者たちは、バッテリーの寿命を研究するためにAIコンピュータビジョン技術を使っているといいます。SciTechDailyのアカウントによると、科学者たちは、機械学習アルゴリズムとX線トモグラフィーデータを組み合わせて、電池の1つの構成要素である正極の劣化の詳細な画像を作成しているといいます。
ニッケルマンガンコバルト(NMC)製の正極は、粒子が導電性の炭素マトリックスによって保持されており、研究者らは、電池の性能低下の原因は、粒子がこのマトリックスから離脱することにあるのではないかと推測しています。研究チームは、スタンフォード大学が運営するエネルギー省のユニットであるSLACのStanford Synchrotron Radiation Lightsource(SSRL)と、フランスのグルノーブルに拠点を置く欧州のX線共同研究機関であるEuropean Synchrotron Radiation Facility(ESRF)の高度な機能を利用していました。その目的は、NMC粒子がどのように分解してマトリックスから離れていくのか、そしてそれがバッテリーの性能低下にどのように関係しているのかを明らかにすることでした。
このチームは、研究を支援するために、AI機能を備えたコンピュータビジョンに注目しました。さまざまな種類の粒子を認識する機械学習により、NMC粒子の大小にかかわらず、どのようにして粒子が正極から離脱するかの3次元画像を作成することができました。
【考察】電池の性能を向上させ、電気自動車などの未来を切り開くAI
環境問題などの観点から注目されている電気自動車や、今や世界中で使用されている携帯電話などになくてはならないのが電池です。
電池の開発にAIが活用され、電池の耐用年数が伸びたり、性能低下を防ぐことができれば、今後電気自動車などの製品が広く浸透するきっかけになるかもしれません。
参照元:AI Being Applied to Improve Health, Better Predict Life of Batteries