カリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究者たちは、天文学調査から得られた大規模なデータセットに含まれる銀河や星をすべて特定して分類するために、天文学画像データをピクセルごとに解析することができる、強力な新しいコンピュータプログラム「Morpheus」を開発したといいます。
天文学調査における作業の自動化の必要性
Morpheusは、画像認識や音声認識などのアプリケーションのために開発されたさまざまな人工知能技術を取り入れたディープラーニングフレームワークです。
カリフォルニア大学サンタクルーズ校の計算天体物理学研究グループを率いる天文学・天体物理学のブラント・ロバートソン教授は、天文学のデータセットが急速に増大していることから、従来天文学者が行っていた作業の一部を自動化することが不可欠になっていると述べています。
「今後数年の間に、大規模な天文学調査プロジェクトから送られてくる、人間には不可能な膨大な量のデータを、コンピュータで処理する方法を見つけなければなりません」
ロバートソン氏は、UCSCのバスキン工学部のコンピュータサイエンス大学院生であるライアン・ハウゼン氏と共同で、過去2年間にわたってMorpheusの開発とテストを行ってきました。両氏は、5月12日にAstrophysical Journal Supplement Seriesで結果を発表したことで、Morpheusのコードを公開し、オンラインでのデモンストレーションを提供しています。
現在チリに建設中のヴェラ・ルービン天文台で行われる「レガシー・サーベイ・オブ・スペース・アンド・タイム(LSST)」のような大規模な調査では、膨大な画像データが得られますが、ロバートソン氏は、そのデータを使って銀河の形成と進化を調査する計画を行っています。LSSTは、32億画素のカメラで毎晩800枚以上のパノラマ画像を撮影し、毎週2回、全天の可視光を記録する予定です。
「何十億もの天体を分類することは、人間には不可能です。この技術でそれらの天体を自動的に分類することで、その情報を使って銀河の進化を知ることができるようになります」とロバートソン氏は述べています。
天体の検出と形態学的分類を可能にするMorpheus
深層学習アルゴリズムを訓練するために、研究者たちは、数十人の天文学者がハッブル宇宙望遠鏡のCANDELS調査で得られた画像の中の約1万個の銀河を分類した2015年の研究から得られた情報を使用しました。そして、いくつかのハッブル深層フィールド調査で得られた観測を組み合わせた画像データにMorpheusを適用しました。
Morpheusが空の領域の画像を処理するとき、それはすべてのオブジェクトがその形態に基づいて色分けされている空のその部分の画像の新しいセットを生成し、背景から天体を分離し、点源(星)と銀河の異なるタイプを識別します。UCSCのルクススーパーコンピュータ上で実行されているこのプログラムは、データセット全体のピクセル単位の解析を迅速に生成するといいます。
「Morpheusは、現在のところ存在しない粒度レベルでの天体の検出と形態学的分類を提供します」とハウゼン氏は述べています。
【考察】天文学調査におけるAIの活用
天文学調査のような、大量のデータを用いる研究においては、人間の作業だけでは到底不可能な領域がでてきます。
AIを活用することで、特定の作業を自動化し、天文学者たちの研究の手助けをすることは、天文学における新たな発見を早めることに繋がるでしょう。
参照元:Powerful new AI technique detects and classifies galaxies in astronomy image data